|
「限界だな」(玄界灘)
翌朝、ホテルを出て彼女を見送ると、九州へ向かうことにした。 私も帰ろうかと思ったが、何故か一人で旅をしたい心境になっていた。 急ぐ旅でもないし、下関から在来線に乗った。移りゆく車窓を眺めながら、ふと下関で別れた彼女のことを思い出していた。
その時不意に電車が大きく揺れた。と思ったら、いきなり座っている私の膝へ若い女性が飛び込んできた。どうやら電車が急ブレーキをかけたようである。「キャー、ごめんなさい」と言って、慌てて彼女は私から離れた。見るからに快活そうな可愛らしい娘であった。
やがて電車は博多に到着した。駅前に立つと九州一の都会だけあって随分にぎやかだ。 「さて、玄界灘でも見に行くとするか」と思い、「海の中道」という海岸に降り立った。玄界灘はもっと波の荒い海かと思っていたが、今日は波も静かで長閑な春の風景である。しばらく海岸で佇んでいると、後ろから声をかける人がいた。 ふと振り向くと、車内でぶつかってきた娘が笑って立っていた。「さっきはどうも」と彼女は言った。私はびっくりしながら「偶然ですね。でも何故ここに」と聞いた。「急に海が見たくなったから」と彼女は答えた。結構私と気が合うようだ。 しばらく立ち話をしていたが、私は「一緒に飲もうか」と誘ってみた。 彼女は「ウン、行く行く」といって嬉しそうな顔をした。
博多は屋台の多い街である。私達はその一角で下らない話をしながら盛り上がっていた・・・ やがて私達はホテルの一室にいた。彼女は意外にも男慣れしているようで前戯が上手であった。私も感じずにはいられなかった。 事を終えた私に「これがホントの博多ザーメンね」と使った袋を差し出してくれた。全く本当に無邪気な彼女である。
「もう一度したいよー」と彼女は甘えたが、私は「もう限界だな」とつぶやくしかない博多の夜であった。
|