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「きり無しの一夜」(霧島の一夜)
熊本で彼女と別れると鹿児島へ向かうことにした。 途中の新八代で新幹線に乗り換えたが、東海道新幹線と違ってビジネスマンは少ないようである。和風っぽい感じの車内は落ち着きがあって快適であった。
鹿児島に着くと、「城山」という展望台に上がってみた。海の向こうに桜島がはっきりと見える。街の景観と洋上にそびえる桜島との調和が美しく、阿蘇とはまた違った雄大な眺めであった。
ふと回りに目をやると、カメラを傍らに下げて懸命にペンを走らせている女性がいた。スポーティーな格好でスラリとした感じの女性であった。「唯の観光にしては熱心だな。何をしているんだろう」と不思議に思ってその女性を見ていた。
彼女は私に気付くとちょっと会釈をした。 私は「随分熱心ですね。取材ですか」と尋ねてみた。彼女は「ええ、私、ルポライターをしているの」と言った。出版会社はルポ等の記事は殆ど下請けに回しているらしく、彼女はその中の一人であった。 しばらく話していると、突然彼女は「今晩霧島温泉にご一緒に泊まって頂けないかしら。女が一人では旅館だと泊めてくれないの」と言った。 私はびっくりしたが、内心は鼻の下を伸ばして頷くと、彼女は「でも部屋は別々よ」と言った。
旅館は純和風の造りで、自然のなかに溶け込んでいて趣のある宿であった。浴衣に着替えゴロッと横になっていると、ノックする音が聞こえた。彼女であった。 「ちょっとお部屋を見せて頂けないかしら」「あら、いいお部屋ね、中庭がきれいなんですね」と言って辺りを見回していた。 私は「一緒に露天風呂に入ろうか。混浴らしいよ」とからかって言ってみた。意外に彼女は真面目な顔をして「うーん、入ってみようかな」と言った。どうやら取材のことで頭がいっぱいのようである。 木立に囲まれた露天風呂は、渓谷にいるような雰囲気であった。彼女は少し離れて恥ずかしそうに辺りを眺めていた。
夕食は量は少なかったが、上品で酒のつまみにはちょうど良かった。せっかく鹿児島に来たので、地元の芋焼酎を頼んだ。思っていたより口当たりも良く飲みやすかった。彼女も結構いけるようである。次第に彼女は饒舌になって行った。 やがていつの間にか私達はひとつになっていた。 結局その夜は明け方まで寝かせて貰えなかった。 つくづく女は強いなと思った夜であった。
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